要点
Kiteは、検証可能なアイデンティティとプログラム可能なガバナンスを備えた自律型AIエージェント同士のやり取りを実現し、エージェント型決済向けブロックチェーンプラットフォームを開発しています。
Kiteブロックチェーンは、AIエージェント間でのリアルタイムでの決済取引と連携を目的とした、EVM互換のレイヤー1ネットワークです。
プラットフォームは、セキュリティと制御を強化するために、ユーザー、エージェント、セッションを分離する3つのレイヤーからなるアイデンティティシステムを採用しています。
KITEは、ネットワークのネイティブトークンです。このトークンのユーティリティは2フェーズに分けて展開され、まずはエコシステム参加とインセンティブに使用され、後にステーキング、ガバナンス、手数料関連の機能が追加されます。
Kiteとは
Kiteは、自律型人工知能（AI）エージェントの作成や管理ができる、エージェント向け決済に特化したEVM互換のレイヤー1ブロックチェーンです。このプラットフォームは、安全かつ検証可能な環境のもと、ユーザーが設定したプログラム可能なルールに従い、個別のアイデンティティを持つエージェントが決済を処理します。
AIエージェント
AIエージェントとは、タスクの実行、意思決定、ユーザーに代わってデジタル上のやり取りの管理を自律的にできるプログラムです。既存の多くのAIエージェントはコンテンツの生成やデータを分析できる一方、金融取引については通常は中央集権的なプラットフォームに依存しており、独自に金融取引を処理する手段を持っていません。
Kiteは、AIエージェント向けのインフラを開発し、検証可能なアイデンティティや権限管理、そしてプログラム可能な動作ルールの定義を提供します。また、ステートチャンネルとしての決済インフラを導入し、AIエージェントがネットワーク上でマイクロペイメントを安全に、リアルタイムかつ低コストで送受信できるようにしています。
Kiteブロックチェーン
Kiteブロックチェーンは、プルーフ・オブ・ステーク（PoS）コンセンサスメカニズムを採用し、迅速かつ低コストでのトランザクションを実現します。このネットワークは、自律型AIエージェントの調整レイヤーとして機能し、高速決済、安全なデータの帰属（所有権）管理、そしてオンチェーンでの評価（レピュテーション）の追跡を可能にします。
Kiteは、データセットやモデル、計算ツールから構成されるAIサービスをモジュールという形態で提供するモジュラー型のエコシステムを特徴としています。ユーザーはこれらのモジュールにアクセスしたり、自らモジュールをホストできます。各モジュールはメインのブロックチェーンに接続され、決済とガバナンスに利用されます。これにより開発者が自身のアプリやサービスを公開、展開、収益化できるオープンなマーケットプレイスが形成されます。
モジュールは、大規模データ処理、プライバシーを保った上での演算、AIモデルのトレーニングなど、特定のユースケースに焦点を当てた半独立的なコミュニティとして運営されます。モジュールの所有者は、メンバーシップの管理、貢献者の招待、報酬の分配を担います。
ネットワーク参加者は、エコシステムへの関与度に応じて、ネイティブトークンであるKITEを獲得できます。AIサービスの構築・提供に貢献した者は、自身が提供するAIサービスの利用に応じて報酬を受け取ります。モジュールの所有者は、自身のモジュール内のオンチェーン活動に連動した収入を得ます。また、バリデーターは、ネットワークのセキュリティ維持に対しステーキング報酬を獲得します。
アーキテクチャ
Kiteは、ネットワーク内でユーザー、エージェント、セッションの連携方法を定義する3つのレイヤーからなるアイデンティティアーキテクチャを採用しています。
ユーザー：ユーザーは、主な所有者であり、信頼の源です。マスターウォレットを管理し、全体のポリシーを設定し、自身のAIエージェントの行動範囲を決定します。すべてのアクセス権や支出限度額はユーザーの権限によって設定されます。
エージェント：各エージェントは、BIP-32規格（単一のルートキーから複数の関連ウォレットを安全に生成するプロトコル）を用いて、ユーザーのマスターキーから派生した個別のウォレットアドレスを受け取ります。これにより、秘密鍵を共有することなく安全に権限を委任できます。
セッション：セッションは、一回限りの支払いやAPIコールなどの短期間の操作のための一時的なアイデンティティです。セッションキーはランダムに生成され、使用後に失効するため、万が一キーが漏洩しても被害を最小限に抑えられます。
もしセッションキーが漏洩しても、その影響は限定されます。エージェントのキーが漏洩した場合でも、その動作はユーザーが事前に設定したルールによって制限されます。この階層構造による設計は、多層的な保護を提供すると同時に、すべてのやりとりが評価システムに反映され、ネットワーク全体の信頼性を向上させます。
決済インフラ
Kiteは、AIエージェント向けの決済インフラとしてステートチャンネルを採用し、高速かつ効率的なトランザクションを実現します。複数の仲介者を経由する代わりに、トランザクションは直接安全なオフチェーンチャンネルを通じて行われます。
チャンネルの開始時と終了時の状態のみをブロックチェーンに記録し、それ以外のトランザクションは参加者間で即時に処理されます。この設計はマイクロトランザクションに対応し、自律エージェントが検証可能かつ拡張性のある方法で、価値の交換やサービスの支払い、データへのアクセスを容易に行えるようにします。
ユースケース
Kiteでは自動決済と認証されたAIトランザクションが導入され、さまざまなアプリケーションで利用できます。具体例は以下のとおりです。
小売取引：AIエージェントが消費者のオンラインショッピングを代行し、KiteはKite PassportとKite Payment APIを通じて安全な委任と検証可能な決済を実現します。
製造業：製造業では、AIエージェントを使って調達やサプライヤーへの発注を自動化でき、Kiteによる委任証明とステーブルコイン決済を活用して、為替コストを削減できます。
ポートフォリオ管理：AIエージェントがポートフォリオを自動管理し、Kiteはプログラム可能なリスク管理や安全対策機能を追加することでより安全で透明性の高い取引を実現します。
デジタルサービス：AIエージェントはKite Passportとレイヤー1ブロックチェーンを使用して、API、データ、ツールを直接決済し、ステーブルコインのトランザクションを行えます。
KITEトークン
KITEはKiteプロトコルのネイティブトークンで、最大供給量は100億に設定されています。トークンの機能は、早期参加と長期的なエコシステム成長支援に向け2つのフェーズに分けて導入され、第2フェーズはメインネットのローンチと同時に開始されます。
フェーズ1
流動性：モジュール所有者は、モジュールの有効性を維持するために、自身のモジュールトークンとKITEのペアを流動性プールにロックする必要があります。
エコシステムアクセス：エコシステムに参加する開発者やAIサービス提供者は、KITEを保有する必要があります。
インセンティブ：KITEの一部は、ネットワークに貢献するユーザーと事業者に分配されます。
フェーズ2
AIサービス手数料：プロトコルはAIサービス取引からの小額の手数料をKITEに変換し、モジュールおよびKiteのレイヤー1ブロックチェーンに再分配します。
ステーキング：ユーザーはKITEをステーキングしてネットワークのセキュリティを確保し、報酬を獲得できます。モジュール所有者、バリデーター、委任者は、自身が支援する特定のモジュールにステーキングすることでインセンティブを共有します。
ガバナンス：KITE保有者は、プロトコルのアップグレード、インセンティブプログラム、パフォーマンス基準に関する提案に対して投票し、ガバナンスに参加できます。
バイナンスローンチプールでのKite（KITE）紹介
2025年10月31日、バイナンスはバイナンスローンチプールの71番目のプロジェクトとしてKITEを発表しました。ファーミング期間中にBNB、FDUSD、USDCをロックしたユーザーが、KITE報酬の配布対象となりました。このプログラムには、同トークンの総供給量の1.5％に相当する合計1億5000万KITEが割り当てられました。
ファーミング期間の後、KITEはシードタグ付きでバイナンスに上場しており、USDT、USDC、BNB、TRYとのペアで取引できます。
まとめ
Kiteは、デジタル経済にAIエージェントを統合するレイヤー1ブロックチェーンです。検証可能なアイデンティティ、プログラム可能なガバナンス、リアルタイム決済などの機能を備え、プラットフォームはこれらのエージェントが安全かつ透明に動作できる環境を提供します。また、Kiteのモジュラー設計はユーザー、開発者、バリデーターを結びつけ、AIエージェントがオンチェーン環境内でデータをやり取りし協業できるオープンなフレームワークを構築しています。
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